オリジナリティにあえてこだわったカスタマイズ
今回は、ボルトオンパーツはできるだけ使わずに仕上げる、というオーダーでのZ2カスタマイズです。
このカスタマイズを行う店舗では、いち早くGMDコンピュートラックをカスタム車両製作に導入しています。
GMDというのは、車体のそれぞれの部位の位置関係を計測する機器のことで、ベース車のフレームチェックに始まり、前後のホイール整列、ジオメトリー設定、チェーンライン出し等がmm単位の精密さで行えるのです。
実際にはmm以下というかなり精密な誤差測定も可能ですが、前後ホイール整列等については、誤差2mm以内が公差となっています。
こういったデータは店舗のPCに保存、蓄積されて新しいカスタムを製作する時にも有効活用されています。
活用例としては、新しいカスタムにおいてホイールのサイズが違っているなどディメンションの変更があった場合でも、良い前例を参考データとして呼び出し応用できる他、同車種なら歪みの許容範囲がどこまでなのかも分かります。
活用するには、走行性能と各種データの相関関係をしっかり把握しておくことが必要です。
今回カスタムするZ2のオーナーの仕事は自動車関係のため、パーツ脱着などはほとんど自分でこなしています。
そのため、店舗でワンオフパーツ製作をし、オーナーがアセンブリ作業を自分で行う、という分業スタイルでのカスタマイズとなりました。
オイルクーラーの上に横置きしたステアリングダンパーがその良い例です。
市販のキットと同様に車体の側面に置く装着方法なら問題はありませんでしたが、コンパクトに目立たないよう収めようと追求したところ、オイルクーラーの上に横置きすることになりました。
ただ、ハンドル切れ角等と干渉することを避けるため、クリアランス設定にかなり試行錯誤しています。
現在のように豊富なボルトオンパーツを組み込むだけだと、なかなかオリジナルな仕上がりになりません。
そんな中、今回のカスタマイズでは考えながらゼロから作っていく、というカスタマイズ本来の楽しさを、その身をもって表しています。
それと同時に、オリジナルな仕上がりになっていますし、きちんとしたデータに基づいているため、もちろん問題なく走ることもできます。
カスタムとして、かなり高い満足感を得られる見本のような車両となりました。
Z2カスタマイズの詳細
チタンコートのワイズギアをフロントフォークに使い、削りだしステムにはギルドデザイン製のZRX1100用を、ブレーキ・クラッチ側ともにマスターシリンダーにはAP製、クラッチ用にはCP3125-3、フロントブレーキ用にはCP4125を使用しています。
エンジンは初期型の1973年式Z2をベースとして746ccから1105ccへと拡大し、シリンダーヘッドにオイルラインがバイパスされてはいますが、目立たないようにユニットはタンク下の配置になっていますし、ハーネス類は引き直されています。
ピストンはSOHC製のφ73mmにして1105cc化しており、燃焼室をスキッシュ加工したりポート研磨したりするなど、かなり手を入れています。
GMDコンピュートラック上ではフォークオフセットなどのスペックまで管理していて、求めているハンドリングに合わせて細部のスペックが調整されています。
AP製の対向6ピストンをブレーキキャリパーにし、カーボンのフェンダーを使っています。
ダイマグを前後ホイールに使い、ヤマハのFZR用アルミスイングアームを加工してバフ仕上げしています。
レイダウンしたWP製ユニットがリアショックに装着され、EXにはBITOのR&D製がセットされています。
パーツを交換したからこの数字になるだろうというのではなく、車体のジオメトリー設定も精密に行い、ハンドリングを良好にするためにこの数字にするというパーツの選択・加工・作業が行われています。