20年以上前に当時最高の技術とパーツをフルに投入した1台
今ではバイクカスタムの世界においても、トレール量、車体姿勢、フォークオフセットなどディメンションが重視されるようになりました。
しかし、カスタムブーム中だった1980年代末から1990年代初め頃には、こういった用語はまだ一般的ではありませんでした。
メーカー製の車両はこうした要素をたくさんのテストを行った末に決定していますが、ユーザーレベルにおいてはそこまで自分で決めるにはハードルが高かったのです。
そうは言っても、純正の流用をしていたとしても、そういった数値を独自設定しているパーツと組み合わせれば、新しい数字が出てきます。
つまりはその新しい数字を適性な数値として認めるのに必要なだけの走行性能、データ、が出せるかどうかなのです。
カワサキのZ系でフロント19インチ・リア18インチを前後とも18インチまたは17インチ化する時、今でも取り上げられているのは大体がここなのです。
その当時、富士スピードウェイことFSWがまだFISCOの通称で呼ばれていたのですが、その頃からMCFAJクラブマンレースは開催されていて、そのスーパーバイククラス参戦によって得られたノウハウはもちろん、当時の最高のパーツ、考えうる限りのチューニング技術をフィッティングしたのがZ1000Mk.IIなのです。
基本的にはストリート仕様になっていますが、保安部品の取り外しをすればサーキット走行もこなせるようなセッティングがされていました。
Z1000Mk.IIカスタマイズの詳細
このカスタマイズで最初に目が行くのは、ワンオフ製作のインテークマニホールドを装着したキャブレターまわりではないでしょうか。
このZ1000Mk.IIは吸気効率を上げるため、エンジンにインテークポートのストレート加工を施しているのです。
さらに、当時アフターマーケットでやっと見られるようになったFCRキャブもダウンドラフトタイプを装着していて、一般的なホリゾンタルではありません。
タンクやフレームバックホーンといったスペース上の物理的な制限もあったため、最初からストレートポートを持っている水冷エンジンに比べると取付角度は緩やかになってしまいます。
このことから、その装着角度であっても油面レベルは十分に確保できるよう、同時にフロート室の形状変更も行っています。
パワーを追求するため最重要しているのは吸入効率であり、フラットバルブキャブのいち早い採用、さらにストレートポート化までもを行っているというのは、レース的でコアな発想と言えます。
エンジンは点火までツインプラグ化されていて、素晴らしいとしか言いようがありません。
足まわりを見てみると、Z650用のステムとモリワキのKYBφ36mmフォーク、ビート製の5本スポークフロント・ダイマグのリアホイールを使った前後18インチを使っているあたり、時代を感じます。
ですが、仕上がりの無骨さなども含めて、当時のロードゴーイングレーサーというのは、このような車両のことを言っていたのではないでしょうか。