レーサーレプリカブームの中登場したゼファー
1980年代の後半は、レーサーレプリカブームと呼ばれていました。
日本のバイクの強さを世界に見せつけていたワークスマシンを市販車としたモデルが次々と登場し、話題をさらっていったのです。
たとえば、1989年にはホンダからNSR250Rが発表されています。
公道マシンとしては尖ったほどの速さを追求するモデルで、とにかく軽量なボディーを目指しているのが特徴です。
それにレース仕様の吹けの良いエンジンを積んでいたので、ライダーにとっては楽しくてたまらないバイクだったのです。
こうしたレースレプリカブームの中でゼファーは登場します。
1989年にZR400という名前で発売されましたが、当時のブームとは異なる色合いのモデルですし、各メーカーがNSR250Rのような本格的な走りを追求したバイクを出している中ですので、出た当初はあまり注目されませんでした。
たとえば、エンジン性能が46馬力という数値だけでもその理由が分かります。
当時の最新モデルは、400ccであればマックスとなる59馬力が標準と考えられていました。
それよりずっと低いパワーのゼファーは、走りの楽しさを感じられないのではと感じられてしまった向きがあります。
また、レーサー仕様が多かったので、フルカウルでもスポーティーなデザインも施されていないのは異色だったのです。
低価格でカスタムのしやすさから人気になった代表作
一見すると、スペックとしても流行りのデザインという意味からも人気が出そうにないモデルでしたが、ゼファーは空前のヒットモデルとして成長していきます。
その一つの大きな理由が、その価格にあります。
発売時の価格は52万9,000円で、他のレーサーレプリカのマシンは安くても60万円台の後半、だいたいは70万円台という価格が付けられていました。
それらと比べると手軽な値段設定で、それなりのスペックのバイクが手に入るということで多くの人の目に留まったのです。
そして、次第にレーサーレプリカの人気が収まっていくと、ゼファーが生み出したネイキッドスタイルが注目されるようになります。
街乗りも高速走行もバランスよく乗れるオールマイティーさに加えて、流行に左右されないデザインも評価される理由となりました。
そして、特にゼファーはカスタムがしやすいという特徴も持っていました。
シンプルにホイールだけを変えるのも良いですし、ハンドルからシート、マフラー、足回りと様々なパーツを変えることもできました。
ライダーの好みのカスタマイズがしやすい設計ですし、パーツもたくさん出ていたためコスト的にも大きな負担となることはありません。
こうして、自分が愛着を持てるオリジナルの一台を作っていくというライダーたちの思いと重なって、ゼファーが圧倒的な人気を集めるようになっていったのです。