カワサキのジェットフォイルとは?
川崎重工業は「川崎ジェットフォイル」という船舶を製造し、今までに15隻を完成納入させています。
この川崎ジェットフォイルとは超高速旅客船という位置づけで、海の上を航行する船と空を飛ぶ飛行機、そして陸を走る自動車のすべての技術を盛り込んだ車両なのです。
つまり、「海を飛ぶ」ことができる船とも言えるのです。
実際に、普通の船のように海面に浮いた状態でスクリューによって航行することもできますが、船体を完全に水面より上に浮かした状態つまり水に接しない状態で疾走することもできるのです。
この川崎ジェットフォイルは、1989年に初めて国内で納入されました。
ベースとなっているのは航空機でも有名なボーイング社が開発したもので、川崎重工業がライセンス契約を結んで製造と販売を行っています。
すでに日本国内では、ボーイングが作ったものを合わせると、離島運輸などのニーズに応えるために合計20隻が運用されています。
ジェットフォイルに搭載されている技術について
川崎ジェットフォイルの技術については、船体の下部に設けられている水中翼が大きなポイントとなっています。
通常の船舶は、船体自体が水に浮く浮力を用いています。
しかし、それでは水に常に接することになり、水を切る抵抗が大きくなります。
その点で川崎ジェットフォイルは、船体から下に突き出るように存在する水中翼にかかる翼揚力によって、船体を浮き上がらせています。
そのため、船底が水面に付くことがなく大幅な抵抗減に成功しているのです。
これに加えて、ウォータージェット推進機を使っています。
これは航空機のジェットエンジンの原理や、水上バイクのジェット推進機構を応用したものです。
具体的には、片側から毎分180tという大量の水を吸い上げて、そこからジェット機構で後ろ側に噴射します。
航空機のジェットエンジンは同じ仕組みを空気を使っていますが、川崎ジェットフォイルの場合は空気の代わりに海水を使うというわけです。
この毎分180tという水量は、実に一般的な25mプールの半分ほどの量となります。
こうして船体は浮力と推進力を得るわけですが、そのままでは非常に不安定な状態となってしまいます。
そこで自動姿勢制御装置を用いて、上下左右の姿勢を保てるようにしています。
水中翼には可動式のフラップが付いていますので、センサーによっていずれかの向きへの傾きが感知されると自動的にフラップが動き、姿勢を制御します。
同じように、左右どちらかに旋回する場合にも、フラップ制御によって船体の向きを変えることになります。
ACSの働きによって安全性が保たれると共に、揺れを軽減し船酔いを防げるというメリットも生まれます。